天気予報にも、
得意と不得意がある。
朝、洗濯物を外に干すかどうか。週末、子どもの試合や遠出の予定をどうするか。私たちは一日に何度も天気予報を見て、小さな判断を重ねています。昔はそれを観天望気と呼んでいました。空の色と風向きで、今日を決めていたのです。
そしてここ数年、その判断は小さなものではなくなりました。線状降水帯、進路の読めない台風、記録を更新し続ける暑さ。異常気象と呼ぶ人もいれば、これが新しい常識だと言う人もいます。どちらにせよ、予報を信じるかどうかが暮らしを左右し、ときに命を左右する場面は、確実に増えています。
だからこそ、問いたいのです。あなたが信じているその予報は、何が得意で、何が苦手なのか。
メキキラボは、日本の天気予報の精度を中立に測り続ける研究所です。
人は、ずっと空を見上げてきました
旧石器時代の人も、朝の空を見て、今日は狩りに出るかどうかを決めていたはずです。飛鳥時代の『日本書紀』には日照りと雨乞いの記録があり、鎌倉幕府の記録『吾妻鏡』には、ほとんど毎日の天気が「天晴」「雨降」と書き留められています。八百年前の人も、今日と同じように、空を気にして暮らしていました。
その判断を、ことばにして残してきたのが天気のことわざです。余談ではなく、地点つき・季節つきの経験則です。当たる日もあれば外れる日もある。外れる条件まで含めて残っていることわざは、予報の「性格」を先に記述していた、とも言えます。
ことわざは、測らずに残った通信簿です。地点が違えば外れ、季節が違えば意味が変わる。だからこそ、同じことばを、観測で答え合わせし続ける必要があります。
そしてこれからも、人は天気を気にし続けるでしょう。朝、誰かに会えば、まず天気の話をするはずです。天気は、時代も立場も越えて、誰にとっても他人事ではない、数少ない話題です。
メキキラボが測ろうとしているのは、その「誰にとっても他人事ではないもの」の、信じ方です。
いま、天気の世界で起きていること
悲観でも楽観でもなく、観測と研究が示している事実を三つだけ記しておきます。天気は確かに変わっています。同時に、予報はかつてないほど良くなっています。この二つが同時に起きているからこそ、「どの予報を信じるか」の価値が上がっています。
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天気は、記録を更新しながら変わっている
世界気象機関(WMO)によれば、2015年から2025年までの11年間は観測史上もっとも暑い11年で、2025年の世界平均気温は産業革命前より約1.43℃高い値でした。日本では2025年の夏が1898年の統計開始以来もっとも暑く、平年より2.36℃高く、群馬県伊勢崎で国内最高の41.8℃を観測しています。気象庁の分析では、温暖化がない条件ではこの夏の高温はほぼ起こり得なかったとされています。
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予報は、静かに、しかし確実に賢くなっている
欧州中期予報センター(ECMWF)の物理モデルは、2024年秋の更新で「使える予報」の範囲をはじめて10日先まで押し広げました。2025年2月には、AIによる予報モデルが世界の主要気象機関として初めて正式運用に入り、2026年1月には米国海洋大気庁も続きました。AIモデルは中期予報で物理モデルを半日から一日上回る精度を、はるかに少ない計算量で出しています。予報の世界は、いま歴史的な転換点にあります。
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だから、選び方が問われている
予報が良くなるほど、各社の差は「当たるか外れるか」ではなく、「どの場面で、どのくらい先まで、どんな癖で当たるか」に移っていきます。その差を見分ける物差しは、予報会社の自己申告ではなく、第三者による継続的な記録でしか作れません。米国にはそれを20年以上続けている機関がありますが、日本にはまだありません。
出典:WMO「State of the Global Climate 2025」(2026年3月)、気象庁「2025年の日本の天候」「異常気象分析検討会」(2025年9月〜2026年1月)、ECMWF(IFS Cycle 49r1/AIFS運用開始、2024〜2026年)。数値は各機関の発表時点のものです。
お気に入りの予報は、何が得意ですか
誰にでも、お気に入りの天気予報があります。長年使っているアプリ、朝の情報番組、通勤電車で見るあの画面。けれども「なぜそれを信じているのか」と問われると、答えに詰まる人がほとんどです。使い慣れているから。みんなが見ているから。一度、大きく外されなかったから。
人に得意不得意があるように、天気予報にも得意不得意があるとしたら、どうでしょう。
- 雨が降るかどうかよく当てる。ただ、降り出す時刻は少し早めに言う癖があるかもしれない。
- 気温と風最高気温はほぼ外さない。けれど海沿いの風となると、ときどき大きく外れる。
- 性格のちがい心配性で雨と言いがちな予報もあれば、楽観的で晴れと言いがちな予報もある。どちらが良いかは、あなたが何を決めるかで変わる。
- 地域のちがい関東では頼れるのに、東北の山あいや沖縄では、別の予報のほうが強いかもしれない。「夕焼けは晴れ」が外れる場所があるのと同じです。
- 何日先か明日の予報は信頼できる。けれど週末まで先になると、どの予報も同じくらい揺れる。その「揺れ方」にも差がある。
こうした特徴がわかれば、判断は変わります。ゴルフの前日なら、時間別の雨に強い予報を夕方に見る。洗濯物なら、朝の数時間の降り出しに強い予報を見る。遠足の前々日なら、3日先の予報が安定している予報会社を選ぶ。台風が近づく週には、慎重な予報を基準に早めに決める。
けれど、こうした判断材料は、いまの日本にはありません。各社とも「精度No.1」を掲げますが、第三者が同じ物差しで測り続けた記録がないからです。
天気は選べません。けれど、どの予報を信じるかは選べます。メキキラボは、その選択の根拠になる記録を、今日から積み上げます。
測り方は、先にすべて公開します
順位を決めるのが目的ではありません。「どの場面で、どの予報を信じるか」の判断材料を作ることが目的です。そのために、測り方を先に決め、公開し、途中で変えません。
- 腕と性格を、分けて測る腕は、雨の日と晴れの日をどれだけ見分けられるか。性格は、迷ったときにどちらへ倒す癖があるか。同じ記録から両方を取り出し、腕には順位をつけ、性格には順位をつけずに記述します。心配性は欠点ではなく特徴です。
- 22地点を毎日2回東京駅・横浜駅・大阪駅などの主要駅10か所と、舞浜・箱根・軽井沢などの行楽地12か所。毎日6時と17時に、1日先から7日先までの予報を保存します。
- 答え合わせは気象庁の観測各地点に隣接する気象庁アメダス観測所の実測値を正とします。予報会社の自己申告は使いません。
- 採点ルールを先に固定日降水量1mm以上を「雨」、降水確率50%以上を「雨の予報」とみなす、など。50%は「半日降る」ではありません。同じような条件の日のうち、およそ半分で雨が観測される、という意味に近い。だから50%を境にするのは、ひとつの決めごとです。ルールは記録開始前に公開し、以後は変更しません。
- 正規に取得したデータだけ各社の公式データ提供サービスを契約するか、公開データを利用規約に従って取得します。画面からの転記は行いません。
- 結果は信頼区間つきで的中率の差が偶然の範囲かどうかを必ず併記します。1地点の順位を言えるのは、おおむね1年分の記録が揃ってからです。
- 予報そのものは出しませんメキキラボは予報を提供する事業者ではなく、予報を評価する研究所です。天気を知りたいときは、お気に入りの予報をご覧ください。
まだ空欄の、天気予報の通信簿
これから埋めていく通信簿の枠組みです。行は予報の作り手、列は腕と性格。「正確さ」と「性格」の両方を、同じ記録から書き込んでいきます。
| 予報の作り手 | 腕(どれだけ見分けられるか) | 性格(迷ったとき、どちらへ倒すか) | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 雨の有無 翌日 |
雨の有無 3日先 |
最高気温 翌日の誤差 |
雨への倒し方 心配性 ↔ 楽観的 |
気温の偏り 高め ↔ 低め |
予報の揺れ よく変わる ↔ 粘る |
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| 気象庁 | ||||||
| 欧州中期予報センター(ECMWF) | ||||||
| 米国海洋大気庁(GFS) | ||||||
| ドイツ気象局(ICON) | ||||||
| 国内の民間予報会社(契約準備中) | — | — | — | — | — | — |
| 国内の民間予報会社(Yahoo!天気、ウェザーニュース、tenki.jp などの予報元)は、データ提供契約の成立後に追加します。評価の対象になることを希望される予報事業者からのご連絡も歓迎します。 | ||||||
連載「天気予報の、せいかく。」
記録から見えたことは、noteの連載で毎月お伝えします。創刊号は無料で公開し、国内の民間予報が揃った回から一部を有料にする予定です。
- 記録開始から3週間最初の観察。順位は出さず、見えてきた傾向のみ
- 毎月初先月の通信簿。全国合算、暫定順位と信頼区間
- 季節ごと三寒四温や梅雨入りのように、季節のことばと予報の癖を重ねて読む
- 1年後年間の通信簿と、地点別の評価